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糖尿病について

糖とは脳の主な栄養分

食事の中に含まれる養分は5大栄養素で、そのうちカロリーになるものは炭水化物、タンパク質、脂質です。脳は1日に120gのブドウ糖を必要としますが、ほとんどは炭水化物由来です(特殊な条件を満たすとアミノ酸は糖質に変換されますが、限定的です。特殊な条件ではケトン体も脳の栄養として使えますが限定的です)。従って、炭水化物を食べることは脳の栄養になっているということになるので大切なことなのです。
 3大栄養素には、炭水化物、脂質、タンパク質がありますが、それぞれ消化、分解されてブドウ糖、脂肪酸、タンパク質となり吸収されます。細胞が働くときに、ブドウ糖以外にも脂肪酸、アミノ酸も利用されますが、ブドウ糖では他の三大栄養素に比べて利用効率が格段によいです。また、他のエネルギー源とは異なり、ブドウ糖はホルモンの作用により各細胞に割り振られるのも効率がよいです。こういった理由からブドウ糖はエネルギーの通貨と呼ばれます。ブドウ糖が重要であることがわかってきたと思います。

インスリンは唯一の血糖値(血中のブドウ糖)を下げるホルモン

インスリンは膵臓にあるβ細胞で作られます。膵臓の位置はお腹の中の背中側に向かって存在します。膵臓から血中に分泌されたインスリンの作用は、細胞にくっつきブドウ糖(グルコース)のトランスポーター(ブドウ糖の通り道になります)を細胞表面に集め、血中の栄養分であるブドウ糖を細胞内に運び入れるように作用します。インスリンのやっていることは血中のブドウ糖を各細胞に送り届けることです。

血糖値を上げるホルモンと血糖値を下げるホルモンがあります。進化の過程では血糖値を上げる必要は色々な場面であったのでしょう。例えば、空腹にもかかわらず狩りに行かないといけない時や、急に外敵から逃げないと命の危険にさらされる時があります。逆に、血糖値を下げないといけないことはあまりなかったと推定されインスリン以外に血糖値を下げるホルモンはありません。インスリンが血糖値を下げる唯一のホルモンとなってしまった理由だと思います。糖尿病の発症時点ではインスリンを作る能力は生まれた時点の半分程度といわれています。

糖尿病という名前の由来

水が蛇口からバスタブに注がれていて、満タンになった水があふれています。これは糖尿病の例えで、水が糖分の例えで、バスタブは人体、あふれた水は尿糖を示しています。過剰な糖分が尿からあふれ出ている様子です。糖尿病の発見は、日本最古の糖尿病の患者は藤原道長と言われていますが、それより昔にさかのぼります。糖尿病は紀元前1500年頃の古代エジプトの医学書に記載されていることが知られています。エジプトの遺跡から発見されたパピルスには「大量の尿を出す病気」という記述があり、これが糖尿病のことを表しているといわれています。また、紀元前600年頃のインドでも、糖尿病と思われる記載があり、「尿が甘くなる病気」と詳述しています。こういったことから尿が多量で尿に糖が出ている体調不良の一群がおり、糖尿病と名付けられました。
糖尿病で血糖値がおおよそ200㎎/dl以上になるかたは尿に糖がでてきており、語源の状態になります。糖尿病の方でも飲み薬を飲んでいて血糖値が安定していれば糖尿病であっても尿に糖が出ませんので、糖尿病の語源とは異なってきています。尿に糖が出ていないからと言って糖尿病ではないとは言い切れないということです。
糖尿病の本態は、尿に糖が出ることではなく、高血糖状態に晒された血管に障害がでて臓器障害をきたす病気です。糖尿病という名前に「尿」が入っていますが、診断基準に尿の検査が入っていないのは、こういう理由です。糖尿病は高血糖状態により診断しますので採血の血液検査が必要で、糖尿病の診断基準は下記の様です。ただし、糖尿病性網膜症は糖尿病の人に特徴的であることより、診断基準(『糖尿病』55巻7号(2012))に記載があります。

また近年、ダイアベティスと名前が変更になっています(日本糖尿病学会・日本糖尿病協会合同 アドボカシー活動|公益社団法人日本糖尿病協会 )。

糖尿病とは、血糖値が高いことにより血管が痛み、臓器が壊れる病。

血管はありとあらゆるところにあり、高血糖の状態があれば全身のありとあらゆるところに症状をきたします。動脈硬化が水面下でおこっており、症状としては糖尿病の3大合併症が起こり、次第に動脈硬化の症状が起こってくるといわれています。

糖尿病の治療の目標は、健康寿命の延長です。

糖尿病の3大合併症

神経障害より始まりますので痛くないのが特徴です。ひとたび症状が出始めると、急な失明や、透析になってしまったりします。
糖尿病により引き起こされる症状は多岐にわたりますが、糖尿病に特徴的でつらい思いをしやすいものに糖尿病の3大合併症があります。この糖尿病3大合併症には、出てくる順番があり、「しめじ」(順番は絶対ではなく前後することもあります)の順番といわれています。「し」は「神経障害」の頭文字で、「め」は「眼」を表し「網膜症」のことで、「じ」は「腎症」のことで、この順番に症状が起こり始めます。糖尿病性神経障害⇒糖尿病性網膜症⇒糖尿病性腎症の順番で症状がでるということです。
糖尿病の合併症がではじめるといつも通りの生活を送れなくなってしまう可能性があります。失明したら普段通りにトイレに行けないかもしれませんし、透析になれば週3回半日程度、通院して透析で血を浄化してもらわないとなりません。健康はなくしたときに気付くとも言いますが、普段通りに生活できるというなにげないそのことが、健康ということかもしれません。また、糖尿病の方の寿命は短くなる傾向があることがあり、健康に最低でも平均寿命まで生活できるように整えることが、糖尿病の治療の目標ということができます。糖尿病の治療の目標は健康寿命の延長ということになります。

糖尿病性神経障害

発症から間もなくでてくる神経障害により痛みを感じなくなってしまうので、急激に症状が出ることがあることは説明しました。糖尿病性神経障害は糖尿病の発症早期、場合によっては5年程度で発症してくるといわれています。痛みの感覚は異常事態(キズ・ケガや炎症)を感知する生体の機能であり、とても大切です。普段は私たち健康な人はケガをしたら痛みの感覚で直ぐに知ることができますし、腹痛が起こった時も普段と違った何かが起こっていることを知ることができます。この痛みの感覚がなくなってしまうのは無防備であり危険なことなのです。
疼痛を感じない状態でキズができると、ただでさえ、高血糖でバイ菌にとって繁殖しやすい状態ですし、糖尿病のため血管が痛んでいると白血球(警察官の役割があります)が動員できませんので重症化しやすいのです。糖尿病の神経障害は足から発症しやすいです。これは、キズができたのを神経の末端から電気刺激として神経の伝達経路で脳へ送り、最終的に脳で感じているため、神経の伝達経路が長ければ長いほど疼痛を感じにくくなるからです。こういったことから、糖尿病の方の足の感染症は起こりやすいですし、重症化しやすいのです。また、骨髄炎など命の危険にさらされる状態では足を切断しなくてはならないことも起こりえます。また、痛みを感じる神経に糖尿病性神経障害がおこると、その神経が痛みを察知していないのにもかかわらず糖尿病性神経障害の障害刺激が脳に指令を送られてしまい、ビリビリしていると痺れた感覚を感じてしまうことがあります。
神経は痛み刺激を脳に送る以外にも、脳から臓器に指令を送っています。例えば、胃や大腸といった消化管、血管があり自律神経の一種です。糖尿病ではこれらの神経も痛みますので、例えば糖尿病の方は便秘を起こしやすいのはそのためです。また、立ち上がる時に脳の位置は50㎝程度高くなると思われますが、この50㎝H2Oの圧力を瞬時に作り出しているのは、自律神経が血管に命令を送っているからです。糖尿病の方は糖尿病性神経障害をきたすとふらつきや立ちくらみを起こすのはこのためです。

糖尿病性網膜症

糖尿病性網膜症は、今でも失明の主たる原因です。日本では糖尿病のかたの眼科受診率が先進国の中で最下位だったが一時期問題になりましたが、日本において近年失明の原因疾患では糖尿病性網膜症は2位に下がってきたことからすると、改善してきているのかもしれません。しかし、失明の原因の1位の緑内障とほぼ同率です。壮年期以降の失明の原因として今でも1位です。

糖尿病の3大合併症は細小血管障害と言われ細かい血管の障害です。目の前側は、角膜、水晶体、硝子体といった透明な部分があり、これらのおかげで網膜に像が移り、脳に画像が送られて見ることができます。ここで血管が邪魔をしまうと見えなくなってしまうわけです。従って、網膜には細かい血管が走っています。
細かい血管は高血糖状態で傷みやすいので、網膜の血管は早期に高血糖で障害されてしまいます。網膜の細胞は酸欠に弱いので、新しい血管を作るVEGFという指令をだし、新しい血管を作ります。しかし、この新しい血管はもろいく出血しやすいのが難点です。わざわざ透明なつくりの硝子体に出血すれば見えなくなりますし、そこにカサブタができたら大変なことです。
新しい血管の一体を増殖膜といいますが、これによる症状はほぼ皆無です。危険な血管があるのにも関わらず、症状がない状態です。危険な血管があるかは、眼科で眼底検査を受け早期発見する必要があります。眼科への受診間隔の目やすいがありますので、下記の表を確認してください。少なくとも、眼底が全く正常のかたでも、年1~2回は必要ですので、今年いってないという方は受診を検討してみてください。糖尿病性網膜症などの見え方について体験したい方は無料でできるのでViaOpta Simulatorを使ってみてください。

糖尿病性網膜症で失明する時には出血が原因になることはお話しました。網膜の細胞の酸欠についてはレーザー治療、新しい血管を作れというVEGFという指令については抗VEGFの注射を打つ治療がありますので詳細は眼科の先生に説明を受けてください。レーザー治療はしっかりした予防効果がありますので、打つべきタイミングを逸しないように、定期的に眼科に通院する必要があることを頭の片隅に入れておいていただければと思います。

眼の状態 受診間隔の目安
正常(網膜症なし) 6か月~12か月に1回
単純性網膜症 3か月~6か月に1回
増殖前網膜症 1か月~2か月に1回
増殖網膜症  2週間~1か月に1回

糖尿病性腎症

透析になる人の人数は超高齢化社会にも関わらず年々減少してきていますが年に3万9683人(2022年現在)の人が透析を開始しています。このうち、糖尿病性腎症により透析になる方が最も多いです。糖尿病性腎症が透析の原因として1位で、12年連続1位を更新中の状態です(2022年現在)。

糖尿病が発症してから5年程度から糖尿病性腎症が発症してきます。糖尿病性腎症の精密検査として、尿中微量アルブミンを測定することで、進行具合を確認することができます。近年、糖尿病などの治療薬でも蛋白尿が減る、尿中微量アルブミンの量が改善することがわかってきていますので、定期的に測定をお勧めしています。糖尿病はネフローゼ症候群を引き起こすこともありますので、蛋白尿の確認は大切です。また、糖尿病だけでは血尿はきたしにくいので、血尿の有無もチェックする必要があります。糖尿病の診断基準には尿検査は必須ではありませんが、尿検査を行うのはこのためです。

糖尿病治療による動脈硬化の予防と糖尿病の死因

糖尿病は動脈硬化を引き起こします。動脈硬化とは、血管一番内側にLDL-Cが蓄積しマクロファージが貪食して酸化することでプラークを形成することで血管の内腔が狭くなったり、血管の中膜が石灰化することによって起こり、脳梗塞、心筋梗塞などを引き起こします。糖尿病の方の寿命が、糖尿病のない方の寿命より短いというデータは別にお話したと思います。糖尿病の方の寿命が短い原因は、日本人の死因と糖尿病の方の死因の歴史を見てみると今後の治療方針がわかってくると思います。
1970年代の死因は脳血管障害、虚血性心疾患、糖尿病性腎症といった動脈硬化に関連した原因が一番多かったのですが、2000年代には動脈硬化に関連した原因は減ってきており悪性新生物の割合が増えてきています。この動脈硬化が減ってきている流れに乗るためには、血糖値を安定させること、また、糖尿病以外の動脈硬化の原因(高血圧症、脂質異常症(別名:高コレステロール血症、高脂血症)、睡眠時無呼吸症候群、慢性腎臓病、喫煙)について体調を整えていくことが大切です。こういった動脈硬化に関連した疾患は対応可能な時代です。

糖尿病と認知症

糖尿病は認知症をきたしやすいことは以前より指摘されています。近年話題のアルツハイマー型認知症の治療薬であるレカネマブはβアミロイドを抗体で吸着するように作用します。アルツハイマー型認知症でも使用できるのは軽度の方に限られており、レカネマブの副作用に脳出血があるようなので全員に安全に使える治療ではないようです。このβアミロイドの代謝にインスリンが関与しており、糖尿病の方は認知症をきたしやすいと想定されています。

糖尿病と歯周病

糖尿病のかたは感染症に弱いといわれています。歯周病も口腔内の感染症の一面があり清潔に口腔内を保つことが大切です。口腔内環境を清潔に保つと血糖値が安定して、糖尿病内科医の感覚では内服薬1錠分程度改善するのではと思っています。糖尿病も微小炎症そのものという観点から、口腔内環境を整えると、糖尿病の状態もよくなるのではと言われています。当院では歯科の先生方とも連携しています。ご自身でかかりつけ歯科医を探す際は日本糖尿病協会登録歯科医さんの資格も一つの目安になります。

HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)とは

「HbA1c」は「ヘモグロビンエーワンシー」と読み、よく略して「エーワンシー」と呼ばれます。HbA1cは健康診断などで採血して測定する値で、糖化したヘモグロビン(Hb)です。ヘモグロビンは理科の教科書で習った赤血球の中にある酸素を運ぶ構造物です。HbA1cは酸素の運搬能力を示す値ではありませんので、健診の貧血の項目には載っていません。
ヘモグロビン(Hb)のうちある程度のHbは血中の糖とくっつき「糖化Hb」=「HbA1c」となります。血糖値が高い時間が長いと、HbA1cの割合は増えます。Hbの単位はg/dlですがHbA1cの単位は%であることも納得されると思います。HbA1cは血糖値の1~2か月の平均の状態を反映しているといわれています。測定方法が国際的な基準で定められNGSP表記で統一されています。診断するときや、毎月の診察で使用する値として重宝するのはこのためです。当院ではHbA1cの値を当日に結果をお伝えすることができます。
糖尿病の合併症を予防することを目標とした際のHbA1cの目標はHbA1c 7 %未満、つまりHbA1c 6.9 %以下です。

血糖値 (グルコース、ブドウ糖は同じ意味合い)

炭水化物は分解され吸収される状態では、糖の最小単位である単糖であるブドウ糖で吸収されます。ブドウ糖は別名でグルコース(Glucose)と書きますが、同義です。血中のブドウ糖濃度を、血糖値と呼びます。健診のデータなどでは、『グルコース(血糖値)」等と表記されることが多いかと思いますが同じものです。HbA1cとの違いは、HbA1cは1~2か月の平均の血糖値の状態を表現しており食事前後の血糖スパイクは表現できていませんし、直近の状態は表現できません。本日採血し、HbA1cと血糖値とで値が乖離していた場合は血糖値が直近、つまり当日の状態を反映していることになります。また、前日にケーキを1切れ食べたからと言って1~2か月の血糖値の平均した状態を反映するHbA1cが大きく変化することはないでしょう。糖尿病の合併症を予防することを目標とした際のHbA1cの目標はHbA1c 7 %未満ですが、対応した血糖値としては空腹時血糖値が130㎎/dl未満、食後2時間の血糖値が180㎎/dl未満と言われています。一度、ご自身のHbA1cと血糖値を比較してみてください。

FreeStyleリブレ

HbA1cの値が目標を達成した方が次に気になってくることが多いのが血糖スパイクでしょう。血糖スパイクとは急激な血糖上昇のことを意味します。いままで測定できなかった食後のピーク時の血糖値をピンポイントで測定できたり、いままで気づかなかった夜間低血糖に気付けたりし、画期的な検査です。2024年 現在、日本でははFreeStyleリブレ2を使用することができます。FreeStyleリブレ2は500円玉程度のセンサーで、腕に張り付けることで血糖値を1分おきに測定することができます。測定されたデータは携帯電話のBluetoothの範囲にあれば自動的にデータが携帯アプリのFreeStyleリブレLinkに飛んできます。血糖値の時間経過は波形として携帯電話のFreeStyleリブレLinkというアプリで確認できます。
FreeStyleリブレ2のセンサーは、使い捨てであり衛生的です。10年前にもこういった機器はありましたが、1台で数十万と高価で使い捨てではなく、検査費用も医療保険も効きませんでした。血糖波形のデータも10年前はFreeStyleリブレLinkに相当する携帯電話のアプリがないためPC専用のアプリケーションでしか血糖波形を確認できず、自宅で確認することや携帯で気軽に血糖値を見ることはできませんでした。現在は、センサーを腕につけ、携帯電話を持ち歩くだけで血糖値を把握でき、入浴も水泳もできますしとても便利です。
①夜間低血糖が気になる方、②妊娠中など厳重に血糖を把握したい方、③運転や高所作業などをするため頻繁に血糖測定をする方、④血糖スパイクが気になる方、⑤料理人など手で作業するので従来の血糖測定ができない方、などにお勧めできます。FreeStyleリブレ2をご希望の方は、インスリンを保険診療で使用中の方は保険で血糖測定ができますので御相談ください。海外ではFreeStyleリブレ3が発売になっているようなので、日本でも使用できるようになりましたらお知らせいしようと思います。

スマートウオッチによる持続血糖測定もネット上では見かけることがあると思います。しかし、スマートウオッチによる持続血糖測定の原理は、皮膚表面の皮膚の状態(汗や保湿剤、日焼け止めクリーム、肌自体の状態)に大きく左右されますので、基本的に治療では使用できません。2024年4月には日本糖尿病学会でも、血糖測定機能をうたうスマートウオッチ(腕時計型デバイス)については使用しないように警告しています。

糖尿病の治療

食事療法

糖尿病のかたの食事では、食べてはいけない食べ物は特にありません。食べ物の量やバランスが大切です。食べ物には3大栄養素である炭水化物、タンパク質、脂質が含まれています。その総カロリーの過剰により内臓脂肪の蓄積をきたしますので、総カロリーが大切です。また、その内訳、特に糖質が直後の血糖上昇に大きく関わります。当院では栄養士さんによる栄養指導を行っておりますので、詳細は栄養士さんより指導を受けていただきましょう。栄養指導は食事を作る方も一緒に指導を受けていただくのが効果的であることより、ご家族さんも一緒に受講していただくこともあります。また、外食や弁当が多い、料理人で味見は欠かせないなど、生活やライフスタイルに合わせた指導を行わせていただきます。
また、糖尿病性腎症の方にはタンパク制限、高K(カリウム)血症をきたす方にはK(カリウム)制限などを要すこともありますので、定期的な採血、尿検査をお願いいたします。必要な時には、医師から別途、栄養指導を勧めさせていただきます。

運動療法

どれくらい運動していますかと聞かれて、自分の運動の様子を答えることのできる方は少ないと思います。マラソンで42.195㎞走りましたとか、重量挙げの選手が100kgを挙げました等ならば数字で伝わりますが、ウインドーショッピングに行って結構歩いた場合では表現することは難しいです。歩数で表現、歩いた時間、または、隣の人と話せる程度の負荷でのウオーキングをしているなどと表現していただくことが多いです。
運動の際に運動着に着替えるような運動でなくても効果があるということがわかってきています。いはゆる「細切れ運動」でも効果が期待できますので、ぜひ試してみてください。ただし、運動してはいけない人もいらっしゃいますので、まずは主治医に相談しましょう。
やせているのに血糖値が高いといわれる方が一定数いらっしゃいますが、低回転型のやせの状態の方が多いと思います。フレイルと言われる状態やロコモティブシンドロームと言われる状態も併存していると思います。高回転型への体質改善として、レジスタンストレーニングを合わせて有酸素運動を行っていくのが良いと考えられます。
炭水化物は分解されエネルギーの通貨と呼ばれるブドウ糖になり、運動の際に血流を介して再分配し、すぐにエネルギーにすることができます。しかし、過度な炭水化物ダイエットと運動の組み合わせでは、炭水化物が少なすぎる状態になり筋肉も分解してしまう可能性があります。どういう食事が適正かは栄養士の先生と相談してみてください。当院では、外来受診時に主治医にご相談していただくと栄養士の先生との時間を予約できます。
糖尿病の治療の目的は健康に寿命を全うすることであるという観点から、健康寿命が大切であり何歳であっても一人で歩けることを目標にしたときに、足腰については外して考えられないことです。継続して運動についても取り組んでいただきたいと思います。
運動した筋肉と安静の筋肉では、インスリンの効き方が異なることが報告されています。運動によりグルコースを細胞内に引き込むためのグルコーストランスポーターが細胞表面に集まることがわかっています。つまり、同じインスリンを産生する条件のもとでも、運動により血糖値がより下がるようになります。

薬物療法

糖尿病で内科に通院中の皆様に一番気になるといわれるのが、内服薬がご自身の体質に合っているかということです。毒にも薬にもなるわけなので最大の関心事です。同じHbA1cの値であっても体質や病状により必要な内服薬や注射薬の種類は異なります。
例えば、SU剤というお薬は膵臓に拍車をかけ無理矢理インスリンを分泌させるように作用します。必要以上にインスリンが出てしまうと、低血糖や肥満のリスクになります。また、馬も拍車をかけ続けるとバテてしまいますが、2次無効といってSU剤で膵臓がバテてしまい薬が効かなくなってしまうこともあります。ただし、一部の遺伝性の糖尿病の方ではなくてはならない内服でもあります。
インスリン抵抗性や内因性インスリン分泌能の評価も薬を選ぶ際の参考になります。インスリン抵抗性が強い時には、代謝改善薬を検討しないといけないかもしれません。インスリン分泌能が低すぎるときには、原因になにがあるか考えなくてはなりませんし、インスリンを補うようなインスリン注射が必要なこともありえます。インスリン抵抗性は体重や腹囲の様子が参考になりますし、内因性インスリン分泌能はCペプチドなどの値が参考になります。

インスリンが必要なケースには、1型糖尿病、2型糖尿病でもインスリンを作れていない方、2型糖尿病でも病気の勢いが強い方、体質(腎障害や妊娠中、アレルギー体質などで使える薬が限られインスリン以外の手がない) などがありえます。インスリンを中止できるケースは、上記のうち「2型糖尿病でも病気の勢いが強い」場合で調子が良くなってきた場合が圧倒的に多いです。当院では当日にHbA1cが結果説明できますので、毎月の病勢を把握しやすい施設になっていますので、ご相談いただければと思います。
仮にインスリンが必要になったとしても近年、インスリンの種類は増えてきています。特にトレシーバ、ライゾデク、ゾルトファイなど1日1回のインスリン投与でも満足度の高い治療が可能になってきました。主治医の先生に相談し、目標の血糖値やHbA1cを確認しつつ、薬剤を選択していただければと思います。今後は、週1回のインスリンなどの革命的な新薬も出てきそうですですので、新薬が出た際にはお話しようと思います。

GLP1-アナログ

もともと小腸で作られるGLP-1というホルモンがありインクレチンに分類されます。インクレチンはIntestine Secretion Insulinが語源であることからわかるように、インスリンを分泌させる消化管ホルモンです。インクレチン関連薬にはDPP4‐阻害薬とGLP-1アナログ(GLP-1Aと略します)があります。インクレチン関連薬の副作用では膵炎、間質性肺炎、類天疱瘡、腸閉塞などがありますが、インクレチン薬は日本で2009年より使用できるようになり糖尿病専門医はそういった副作用への対応に慣れてるということになります。
小腸を食べ物が通過するとその刺激で小腸からGLP-1が分泌され、膵臓を刺激しインスリンの製造をサポートするようになります(増幅経路と呼ばれているものです)。GLP-1アナログとは、このGLP-1と同様の働きをする成分です。現在、短時間作用型GLP-1アナログの注射、長時間作用型GLP-1アナログの注射、経口GLP-1アナログがあります。GLP-1アナログでは高い血中濃度を作ることができ、胃の蠕動を緩やかにして食べ過ぎないようにしてくれたり、脳の満腹中枢を刺激し食べないようにしてくれたりするようになりました。肥満症に対してもGLP-1 アナログが保険診療できるようになり話題になりました(施設制限もあり糖尿病専門医などでないと処方できません)。ただし、正しい使い方をしないと膵炎などの副作用が増えるのではと言われています。
経口GLP-1アナログ(2024年現在)では、空腹時に内服すること、内服後30分以上あけて食事を開始すること、水120㏄以下で内服するなど、大変な内服手順がありますがこれをすべて守っても体内に吸収されるのは約2%程度と想定されます。そういった理由から場合によっては注射薬をお勧めすることが多いかと思います。
今後は、新しい種類の経口GLP1-A、トリプルアゴニスト(GLP1/GIP/グルカゴン)など新薬が登場するといわれて言いますので、登場したらお話しようと思います。

季節に応じた糖尿病の注意点

ペットボトル症候群

夏の暑い日には冷えた飲料を飲むことが多いと思います。炭酸飲料でもスポーツドリンクでも、冷やすと甘い味を感じにくくなることがありますので、飲料製品はブドウ糖が含まれているものが多いと思います。炭水化物は多糖に分類されると思いますが、分解され、細かくなり単糖の状態になると消化管で吸収されます。水に溶けている糖分は単糖の状態のものが多く含まれているので、吸収がとても早く血糖が上昇するスピードも速いく、膵臓でインスリンを作るスピードを上回ってしまうことがあります。血糖値が高い状態が続いてしまうとインスリンの細胞に対する効きが悪くなり、また、膵臓のインスリンを作る能力が仮死状態になってしまうことがあります(糖毒性と言います)。こうなってしまうと血糖値は簡単には下がらなくなってしまいます。この状態がペットボトル症候群です。こうなってしまうと、高血糖状態によりインスリンの効きが悪くなり、自分ではインスリンも作れない状態になり、悪循環にはまり込んでしまっています。インスリン注射により無理矢理でも血糖値を下げる必要が出てきてしまいます。こうならないためにも、夏場など甘い飲料には特に注意が必要です。同様にして、砂糖漬けの果物の缶詰などのシロップや、アイスにも注意が必要です。

年末年始

忘年会、新年会、歓迎会、懇親会、元旦、クリスマスなど外食や飲酒、ケーキを食べる機会が増え、年末年始のご挨拶や田舎からの果物のいただきものがあったり、寒さもあいまって運動量も減りますので、普段お忙しくしている方ほど血糖値が乱れることが多くなります。糖尿病の方で食べてはいけない食品は基本的にはありませんが、その量には注意が必要です。誰しもあるあると思うことばかりだと思いますし、ご自身のHbA1cを見返してみると少なからず年末年始で高くなっていることもあるかと思います。回避できない行事なども多々あると思います。こういった飲食の際も種類よりも量について注意してみることをお勧めします。また、年末年始は内服薬を切らしやすいタイミングでもありますので、医療機関の営業日やご自身の内服の手持ちも確認していただければと思います。

引っ越し

引っ越しを期に通院先を探しあぐね、転居後に内服薬をきらしてしまう方が多いと思います。ただでさえ慣れない場所で衣食住で適応しないといけないのに通院先を考えるのはとても大変です。糖尿病の治療が中断しないのが一番良いと思います。いろいろな通院先の選び方がありますが、自宅の近くの糖尿病の専門医の先生を頼りに通院先を探してみるのも手かもしれません。

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