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甲状腺について

甲状腺に関連する、疾患や病態

甲状腺は首についている臓器で「甲状腺ホルモン」を産生しています。甲状腺ホルモンは活気をつけるホルモンです。脳みその中に視床下部という場所があり、視床下部は摂食行動の調節、代謝調節、女性のホルモン周期の調節、ストレス応答の調節、睡眠覚醒の調節などの機能があります。その中でも、甲状腺についてかかわる視床下部の働きには、TRHというホルモンを産生することが挙げられます。TRHが視床下部で産生され、血流で運ばれ脳の下垂体という場所に作用して、TSHというホルモンを作るように作用します。TSHは血流で運ばれ甲状腺に作用して「甲状腺ホルモン」を産生します。視床下部、下垂体、甲状腺という順にホルモンが作用して体調を調整することは、微調整しやすいというメリットがあるといわれており、理にかなっています。診察の際には、TSH、甲状腺ホルモンとしてFT4、必要に応じてFT3というホルモンの値を測定することが多いです。当院では、こういった値を当日結果説明できる機器を導入しています。

甲状腺の機能の異常

甲状腺機能低下症

甲状腺ホルモンは、活気をつけるホルモンでした。甲状腺機能低下症というのは、この甲状腺ホルモンが少ない状態です。各臓器で活気がなくなったことをイメージされると症状が理解できるでしょう。甲状腺ホルモンが心臓で不足すると脈が遅くなります。甲状腺ホルモンが胃腸で不足すると便秘になります。甲状腺ホルモンは全身の細胞に働きますがその作用が少なすぎると、体重が増えてしまったり、動きつらくだるくなり倦怠感を感じたり気分が落ち込むこともあります。甲状腺ホルモンはコレステロールを燃やしてくれる作用もありますが、甲状腺ホルモンが減るとコレステロールの値が高くなることもあります。甲状腺の腫れや足のむくみも甲状腺機能低下症の代表的な症状です。
甲状腺機能低下症の原因は、橋本病のことが多いです。橋本病は英語でもHashimoto's Diseaseと表記され、日本人の名前がついている病気です。日本人成人女性では10人に一人とよくありふれた病気です。自己免疫により、ご自身の免疫が間違ってご自身の甲状腺に作用してしまい、甲状腺ホルモンを作れなくなってしまい起こります。甲状腺機能低下症の各種臓器で活気がなくなり、採血上でも甲状腺ホルモンが低く、抗TPO抗体などが陽性で、甲状腺エコーで甲状腺が全体的に痛んでいる状態であることを確認し、橋本病と診断していきます。

甲状腺中毒症

甲状腺ホルモンは、活気をつけるホルモンでした。甲状腺中毒症とは甲状腺のホルモンの量が過剰な状態です。各臓器で活気がつきすぎると症状をきたします。甲状腺ホルモンが心臓に働きすぎると脈が速くなります。甲状腺ホルモンが胃腸に働きすぎると胃腸が動きすぎて軟便や下痢になります。甲状腺ホルモンの作用で神経が働きすぎると汗が出すぎたり、神経が高ぶって夜眠れなくなってしまったりしてしまう方もいます。甲状腺ホルモンが全身の細胞に働きすぎると、全身の細胞に活気がついて瘦せていくこともありますし、コレステロールを燃やしてくれますのでコレステロールの値が低くなることもあります。甲状腺中毒症は、原因により甲状腺機能亢進症と破壊性甲状腺炎に分けて考えることができます。

甲状腺機能亢進症

甲状腺機能亢進症はバセドウ病によることが多いです。甲状腺は、甲状腺ホルモンを作る工場と例えることができます。バセドウ病ではTRAb抗体(別名:TSHレセプター抗体)が原因になり、変に工場のスイッチを押してしまい甲状腺ホルモンを作りすぎてしまう状態です。こうして、甲状腺ホルモンが作られすぎてしまい、甲状腺ホルモン過剰の症状を引き起こします。また、工場がフル活動なので甲状腺は全体的に腫大します。また、甲状腺自体の活気もつき、甲状腺の血流も増えます。甲状腺のエコーはバセドウ病の診断に有効なことが多いです。甲状腺エコー検査では、典型的には、甲状腺の腫大・甲状腺の血流が増加しているのが見えます。

破壊性甲状腺炎

先ほど、甲状腺は甲状腺ホルモンを作る工場と例えましたが、貯蔵タンクとも例えることができます。何らかの原因で、甲状腺に炎症がおこり甲状腺ホルモンをためている貯蔵タンクが壊れてしまうと甲状腺ホルモンが過剰な状態になり、甲状腺中毒症と症状が似てしまうので、正しい診断が大切になってきます。採血データ上では、甲状腺ホルモンが増えており、破壊性甲状腺炎と甲状腺機能亢進症は似たデータですが、甲状腺エコー(超音波検査)では真逆の状態を示します。典型的な破壊性甲状腺炎ではダメージを受けた甲状腺の様子がエコー(超音波検査)で判定できます。逆に、典型的な甲状腺機能亢進症ではダメージを受ける領域はなく、特にバセドウ病では甲状腺は腫大し血流も増加していることが甲状腺エコー(超音波検査)で判定できることがあります。破壊性甲状腺炎には、亜急性甲状腺炎、無痛性甲状腺炎などがあります。

バセドウ眼症

バセドウ病の原因物質は、TRAbという抗体であったことはお話ししました。この抗体が外眼筋に作用し炎症を起こすと目に影響が出て目が飛び出る、ように変形してしまいます。最悪の場合は失明の危険性がありますので、主治医の先生の指示に従って眼科へ受診しましょう。バセドウ病のかたは、バセドウ眼症をきたす可能性がありますので発症の引き金になりうるタバコは止めましょう。

潜在性甲状腺機能低下症

潜在性甲状腺機能低下症は甲状腺機能低下症の前段階とも考えられ、甲状腺ホルモンは正常範囲ですが、甲状腺ホルモンの量を調整する脳から見ると不足しているような状態です。典型的な採血データでいうと甲状腺ホルモン自体であるFT4は正常値ですが、脳からの甲状腺への命令であるTSHが増えている状態です。潜在性甲状腺機能低下症の方は今後、甲状腺機能低下症に本格的になってしまう可能性がありますので、甲状腺の状態を甲状腺エコーでチェックしたり、甲状腺機能低下症をきたす橋本病の自己抗体をチェックしたりします。潜在性甲状腺機能低下症の場合は、甲状腺ホルモンを定期的に確認する必要があります。高コレステロール血症(別名:脂質異常症、高脂血症)や倦怠感などの症状がある場合は積極的に内服治療をすることも多いです。

妊娠性甲状腺機能亢進症

妊婦さんの中には「つわり」が強く出る方もいます。つわりの時期に甲状腺ホルモンを測定すると、甲状腺ホルモンが増えていることがあります。妊娠してから胎盤は大きくなります。胎盤が大きくなるにつれて胎盤ホルモンもたくさん作られます。胎盤ホルモンは妊娠13週目あたりまでたくさん作られます。この胎盤ホルモンが過度にたくさん作られてしまい、甲状腺に働くと甲状腺ホルモンを作るように働き、甲状腺ホルモンが過剰になることがあります。甲状腺機能亢進症をきたすような疾患がないことを確認する必要がありますが、妊婦さんでつわりがひどく、胎盤ホルモンがたくさん出ていれば、妊娠性甲状腺機能亢進症が考えられます。

不妊と甲状腺機能低下症

不妊の原因に、甲状腺ホルモンが不足している場合があるといわれています。甲状腺ホルモンは胎児の成長に関係しており、母体の甲状腺ホルモンが不足していると、赤ちゃんの発育が悪くなる可能性が言われているからです。まだ各国から意見がでていますが、不妊のお母さんはTSHを低めにするように多少、甲状腺ホルモンが多くなるようにコントロールすることが多いです(TSHは脳みそから見て甲状腺ホルモンが十分に出ていないときに、甲状腺に対して頑張るように出す指令ホルモンです。)。

甲状腺の構造上の異常

甲状腺の腫れ

甲状腺全体が腫れている場合と、甲状腺の一部が腫れている場合があります。全体的に腫れている時には、橋本病やバセドウ病など抗体が甲状腺全体に作用し腫大するような状態です。一部が腫れている時には、良性なのか悪性なのか見極める必要性があります。悪性では、辺縁がギザギザだったり不鮮明だったりし、内部に微細な石灰化が多く含まれていたり、内部がエコーで黒く映っていたり、大きさが大きくなる傾向が強い特徴があります。甲状腺のエコーを定期的に行うのはこのように悪性か良性かを推測するためです。悪性を疑う場合には針を刺して細胞の検査をすることもありますので、連携している専門病院や総合病院へご紹介させていただきます。

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