痛風(痛風発作)・高尿酸血症
痛風(痛風発作)
痛風の発作は、尿酸値が高い方で突如として足の親指の付け根などが激しく痛みが襲いかかります。この悶絶するような痛みは、関節に溜まった尿酸結晶を異物とみなした免疫細胞が、炎症サイトカインを大量に放出して猛烈な炎症を起こすために生じます。患部はパンパンに赤黒く腫れ上がり、歩くのはおろか、靴下や布団が擦れるわずかな風の刺激にさえ、飛び上がるほどの激痛が走ります。
高尿酸血症
日本の高尿酸血症の診断基準は尿酸値が7.0㎎/dLを超えるときに高尿酸血症と診断します。高尿酸血症の治療には食事療法・運動療法・薬物療法がありますが尿酸値を6.0㎎/dL未満にすることが目標です。高尿酸血症でイメージが湧きやすいのは痛風発作ですが、腎臓に尿酸結晶が影響し痛風腎、最悪の場合透析を引き起こしてしまう病気です。
体の中での尿酸の役割~プリン体の理解から
体でのプリン体の役割は、DNA、RNAやATPを形作ることです。プリン体は吸収される作られる過程では、リボースなど糖の状態バラバラの状態で吸収され、体の中で再度プリン体に作りあげられDNA、RNAやATPを形作っています。尿酸はプリン体が役割を終え、排出される時の姿です。
- 遺伝情報の設計図:DNAとRNAの構成要素
プリン体の大切な役割のうち一つは、生命の設計図である核酸(DNAとRNA)を形作ることです。核酸を構成する4種類の塩基のうち、アデニン(A)とグアニン(G)の2つがプリン体に属します。これらは化学的に「プリン環」という二重の環状構造を持っており、この構造が対となるピリミジン塩基(チミンやシトシン)と水素結合を形成することで、DNAの二重らせん構造を安定させています。
DNAは親から子へ、あるいは細胞から細胞へと遺伝情報を正確に伝える役割を担い、RNAはその情報を読み取ってタンパク質を合成する実行役を担います。つまり、プリン体がなければ、私たちの体の組織を作ることも、生命を次世代に繋ぐことも不可能です。
- 生命のエネルギー通貨:ATPの主成分
プリン体の大切な役割のうちのもう一つは、私たちが活動するためのエネルギーそのものにも深く関わっているATP(アデノシン三リン酸)の合成です。ATPは、プリン体であるアデニンに糖(リボース)と3つのリン酸基が結合した構造をしています。筋肉を動かす、体温を維持する、神経伝達を行うといったあらゆる生命活動は、ATPが分解されてリン酸が外れる際に放出されるエネルギーによって賄われています。
プリン体より尿酸ができる過程
糖の最小単位である単糖のリボースよりプリン体は合成されます。肝臓では、リボースのリン酸化されたリボース5-リン酸よりPRPPシンターゼによりPRPPが合成され、その後、プリン体が作られます。プリン体は、DNA、RNAあるいはATPの状態で遺伝子を構成したり、エネルギーのやり取りをしたりします。役割を終えたプリン体のうちヒポキサンチン、グアニンの状態からキサンチンオキシダーゼの作用でキサンチン、またキサンチンオキシダーゼの作用でさらに尿酸になると役割を終えたプリン体は、排泄されるようになります。
よくある質問(FAQ)
Q1.プリン体ゼロのビールを飲んでも尿酸値が上がってしまうとききましたが、本当ですか?
A.1
痛風発作の病態生理と炎症のメカニズム
痛風発作は、結晶性の関節炎に分類されます。小学生の理科の実験で食塩の結晶やミョウバンの結晶を作ったのを覚えているかもしれません。関節内における尿酸塩結晶に対する過剰な生体防御反応が痛風発作の原因になります。痛風発作は耐え難い痛みですが、インターロイキン-1βという炎症起点を介して強大な炎症反応がおこります。
- 尿酸塩結晶が関節内に入り込みマクロファージに異物として認識される
痛風発作の初発段階では、関節軟骨表面に沈着した尿酸塩結晶の関節液中への剥落、迷入が起こります。尿酸塩結晶の関節液中への剥落は、血中尿酸値の急激な変動が主な原因として起こります。関節内では生体の防御を担うマクロファージがおり、関節液中に遊離した針状の尿酸塩結晶を異物として認識します。
- マクロファージ内においてNLRP3インフラマソームの活性化とサイトカイン放出
マクロファージ内に取り込まれた尿酸塩の結晶は、マクロファージの細胞内器官であるリソソームに傷をつけてしまい炎症がお起こります。この細胞ストレスがきっかけとなり、細胞質内でタンパク質複合体「NLRP3インフラマソーム」が形成・活性化されます。活性化したインフラマソームは、前駆体タンパク質を分解し、極めて強力なプロ炎症性サイトカインであるインターロイキン-1β(IL-1β)を産生、細胞外へ放出させます。IL-1βは周囲の毛細血管内皮細胞を活性化させ、血中免疫細胞を呼び寄せるためのシグナル(ケモカインなど)の放出がおこります。
- 好中球の遊走および爆発的な炎症動態
IL-1βの刺激を受けた血管内皮には接着分子が発現し、血中を循環する白血球の主力である好中球が血管外へ遊走(動員)される。関節腔内に集結した膨大な数の好中球は、尿酸塩結晶を貪食すると同時に、活性酸素などを放出し、炎症反応を爆発的に増幅させる。この「炎症の連鎖」が関節内の組織損傷を招き、痛風特有の激烈な症状を構築する。
- 疼痛の発生機序と炎症の自己終息
集結した炎症細胞による浮腫の形成と化学的刺激物質の放出は、関節周囲の痛覚受容器(自由神経終末)を高度に感作し、激痛を惹起する。また、血管拡張に伴う発赤、局所熱感は典型的な炎症の徴候である。通常、発作は1〜2週間で終息していきます。しかし、高尿酸血症という基礎疾患が改善されない限り、関節内には結晶が残存し、再発を繰り返す慢性的な病態へと移行してしまいます。
痛風発作の症状
痛風発作は典型的には、痛風発作の痛みの直前に前兆があります。関節に「違和感・ムズムズ」パターンで、関節が何となくいつもと違うと感じます。 「関節がムズムズする」「何かが詰まっているような感じ」「重苦しい違和感」という風に表現されることが多いです。これは、 炎症が本格化する前段階で、免疫細胞が集まり始めているサインです。
または、 「ピリピリ・予感」パターンもまります。神経が過敏になり、痛みの「一歩手前」を感じる表現です。「電気を通したようにピリピリする」「チクチクした刺激がある」「あ、明日来るな、と確信する予感」という風に表現されることが多いです。これは、 尿酸結晶が剥がれ落ち、わずかに神経を刺激し始めている状態です。まれですが、「圧迫感・靴がきつい」パターンもあります。目に見えるほどではないものの、わずかな腫れが生じている状態で、「靴が急に窮屈に感じる」「関節の皮が張っている感じ」「関節の可動域が狭くなった気がする」という風に表現されます。これは、軽微な血管拡張が始まり、局所にわずかな浮腫(むくみ)が出始めている状態です。
痛風発作の発作が実際にでると、足の親指の付け根や、かかとのあたりが赤くなり、腫れて、痛みます。風でも痛むよことから「痛」「風」=痛風といいますが、とても痛いです。松葉づえでいらっしゃる方もおられます。
結晶性関節炎であり、血流が弱く出やすいのが、足の親指の付け根や、かかとのあたりであり、ここに尿酸塩の結晶ができやすいです。
痛みは炎症細胞やサイトカインも原因になっておりますので、しっかり鎮痛剤、炎症を抑える内服薬が必要です。
痛風発作の予防
痛風発作の再発作の予防についてですが、結晶性関節炎であり、溶かすまでが治療です。尿酸塩の結晶が析出するのは、理科の実験の食塩やミョウバンの結晶の作成と似ていることはご説明しました。今度は、結晶を溶かし切らないといけません。組織の中にできた尿酸塩の結晶を血中に溶かしだすには、血液の尿酸濃度を下げないと溶かせません。具体的には尿酸値の値を6mg/dl未満を維持して数か月から年単位で整えた方が良いでしょう。
治療薬には①体の中で尿酸が作られるのを抑える薬、②尿からの排泄を促す薬がありますので、どちらが適切か主治医の先生に相談してみてください。
痛風腎
高尿酸血症が持続すると腎臓に負担がかかり、慢性腎臓病を引き起こし、最悪の場合は透析になってしまいます。現在は稀ですが現在でも透析の原因にもなっています。尿酸の結晶が腎臓(髄質)に沈着することにより、腎臓の尿細管間質が障害されてしまうために、腎臓の機能が弱まってしまいます。また、高尿酸血症により尿の酸性化が起こり、尿路結石が起こりやすくなってしまいます。
高尿酸血症とは?
高尿酸血症の診断基準
日本の痛風の診断基準は尿酸値が7.0㎎/dLを超えるときに高尿酸血症と診断します。高尿酸血症の治療には食事療法・運動療法・薬物療法がありますが尿酸値を6.0㎎/dL未満にすることが目標です。
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判定 |
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7.0 mg/dL 以下 |
正常範囲 |
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7.0 mg/dL 超 |
高尿酸血症 |
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治療目標 |
6.0 mg/dL 以下を維持 |
(出典:日本痛風・尿酸核酸学会 高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版 2022年追補版)
日本の高尿酸血症の診断基準は尿酸値が7.0㎎/dLを超えるときに高尿酸血症と診断します。高尿酸血症の治療には食事療法・運動療法・薬物療法がありますが尿酸値を6.0㎎/dL未満にすることが目標です。
世界的な診断基準
アメリカリウマチ学会(ACR2020)もヨーロッパリウマチ学会(EULAR)も、目標値は「6 mg/dL未満」と設定しており、痛風結節のある重症例では「5 mg/dL未満」を目指すよう推奨しています。「6 mg/dL以下を維持する」という原則は世界共通です。
尿酸値を下げるためには
プリン体の摂取量を控えましょう。プリン体は1日に400㎎程度が良いと言われています。プリン体が多く尿酸が上がりやすい食品は、比較的好き嫌いが分かれるものが多く、鶏レバー、豚レバー、牛レバー、白子、あんこうの肝、太刀魚、マイワシ、あとは、サプリ等に多いビール酵母、クロレラ、スルピリナ等があります。そのほか、干物(マイワシ、アジ、サンマ)、カツオ(生)、オキアミが多いです。飲料ではアルコールは尿酸値を上げやすいです(ただし、飲料の種類によってプリン体の含有量は異なります)。また、尿酸は尿より排泄できるので、尿酸の排泄を促せるように水分を多めに、また、こまめにとることも有効です。
慢性腎臓病・透析予防・尿酸についての食事について管理栄養士さんとの栄養指導をご希望の際には、医師の診断が必要ですので診察の際に申し出てください。
内服薬の必要なタイミング
慢性腎臓病の方は透析予防に積極的に尿酸値は下げておいた方が良いでしょう。食事、運動につて改善を試みても尿酸値が8mg/dl以上になってしまうようであれば、内服薬を開始すべきタイミングです。また、痛風をしたことのある方は尿酸値5㎎/dl台をKeepするように、必要性に応じて内服薬を検討するとよいでしょう。担当のドクターにご相談されるとよろしいでしょう。
他の病気も持っている方へ
高血圧の薬を飲んでいる方: 高血圧に使われる一部の利尿薬(サイアザイド系)は尿酸値を上昇させます。
腎臓の機能が低下している方: 腎機能が下がると尿酸が排泄されにくくなり、尿酸値がさらに上がります。腎臓を守るための尿酸管理が特に重要です。
糖尿病・メタボリック症候群がある方: インスリンの効きが悪い状態では、腎臓からの尿酸排泄が減ります。生活習慣の改善が特に重要です。
治療を始めるとどんな良いことがある?
痛風発作が大幅に減る: 治療を始める前、痛風発作を繰り返している方の多くは年に1〜2回以上の発作を経験しています。初めて発作を起こした後、治療をしないまま放置した場合、1年以内に再発する確率は62%、2年以内では78%にのぼるというデータがあります。一方、尿酸値を6.0 mg/dL以下に維持すると、12カ月後の発作頻度は約5%まで低下します。これは治療していない方(尿酸値8 mg/dL以上)の10〜15%と比べて、半分以下になるということです。さらに目標値(6 mg/dL未満)を達成した患者さんでは、48〜72週の時点で60%以上が発作ゼロを達成したことが大規模な無作為化試験(STOP Gout Study)で示されています。尿酸の結晶が関節から溶け出すには時間がかかるため、薬を始めてから1〜2年かけてじっくりと体質が変わっていくイメージです。
- 急に歩けなくなるリスクがなくなる:仕事・生活への影響がなくなる
- 尿路結石ができにくくなる
- 腎臓を守ることができる(腎障害合併例で特に重要)
- 痛風結節が縮小・消失する
- 心血管リスクを長期的に下げる
当院でできる検査
血清尿酸値(血液検査)
最も基本の検査です。空腹でも食後でも受けられます。
腎機能(クレアチニン・eGFR・BUN)
腎臓がどの程度ダメージを受けているかを評価します。どの薬を使うかの判断に直接影響します。
尿検査(随時尿)
尿の酸性度(pH)と尿酸の量を調べます。尿酸が体内で作られすぎているのか、排泄されにくいのかを判別することで、最適な薬を選ぶことができます。
血糖・HbA1c・脂質(血液検査)
糖尿病・脂質異常症などの合併症を同時にチェックします。
当院での治療
💡 「何を食べていい?食べてはダメ?」に丁寧にお答えします
「ビールはやめたのに、なぜ尿酸値が下がらないの?」「どんな食事にすればいい?」——痛風・高尿酸血症は、食事との関係が深い分、こういった疑問を多くの患者さんが抱えています。
当クリニックでは、管理栄養士が患者さん一人ひとりの食習慣を聞き取り、プリン体・アルコール・水分摂取など、尿酸値に影響するポイントを具体的にアドバイスします。「食事制限」を一方的に押しつけるのではなく、「好きなものをどう上手に食べるか」を一緒に考えるスタイルで指導を行っています。高尿酸血症は保険診療の範囲内で栄養指導を受けていただけます。
生活習慣の改善
プリン体の摂取量を1日400 mg以下に抑える
「1日400 mg」と聞いてもイメージしにくいと思います。目安として、鶏レバー100g(焼き鳥3〜4串分)だけで約312 mgになり、それだけで1日の上限に近づいてしまいます。一方、同じ100gでも豚ロースは約91 mg、木綿豆腐は約31 mgと控えめです。
1日の食事全体で400 mgに収めるには、次の組み合わせが目安になります。
- 朝:ご飯1杯(約26 mg)+卵(ほぼ0 mg)+みそ汁
- 昼:豚ロース80g(約73 mg)+野菜炒め
- 夜:カツオの刺身5切れ(約106 mg)+豆腐半丁(約31 mg)+野菜
このような1日3食で合計約250〜350 mg程度に収まります。レバーや干物を食べる日は他の食事でプリン体を少なくするなど、1食で食べ過ぎないことが大切です。プリン体が特に多いレバー類・魚の干物・白子・あん肝はできるだけ控え、普通の肉・魚は「1食1人前(80〜100g)程度」を目安にすれば、過度な食事制限をしなくても400 mg以内に収めることができます。
その他の生活習慣改善のポイント:
- アルコールを控える(特にビール)
- 毎日2L以上の水・お茶を飲む
- 体重を落とす(肥満は尿酸値を上げる)
毎日の食事・運動の工夫
控えた方がいい食品
- レバー(豚・牛・鶏):プリン体が非常に多く(100gあたり約300 mg超)、月1〜2回程度にする
- あん肝・白子:100gあたり400 mg以上と極めて多い。できるだけ避ける
- イワシの干物・かつお・えび:100gあたり約200 mgと多め。食べ過ぎに注意
- ビール:アルコール自体が尿酸値を上げる上に、プリン体も含む
積極的に食べた方がいい食品
- 野菜全般・海藻・きのこ:プリン体が少なく食物繊維が豊富
- 乳製品(牛乳・ヨーグルト):尿酸値を下げる効果が報告されている
- 豆腐・こんにゃく:プリン体が少なく低カロリー
- 水・お茶・麦茶を1日2L以上:尿酸を尿として流し出します。果糖の多いジュースは尿酸値を上げるので注意
運動の注意点
ウォーキング・水泳・自転車などの有酸素運動は体重管理に有効ですが、激しい筋トレ・全力ダッシュなどの無酸素運動は一時的に尿酸値を上げるため、無理のない強度から始めましょう。
夏の時期には脱水症になると尿酸値は上昇してしまいますので、適切な量のこまめな水分補給が重要です。
薬物療法
尿酸生成抑制薬(フェブキソスタット・アロプリノール) は尿酸が体内で作られるのを減らす薬です。腎機能が低下している方にも使いやすい薬です。尿酸排泄促進薬(ドチヌラド) は腎臓からの尿酸の排出を増やす薬です。
痛風発作が起きてしまった急性期は、コルヒチンや消炎鎮痛薬(NSAIDs)で炎症と痛みを抑えます。尿路結石のある方には尿をアルカリ化する薬(クエン酸製剤)を追加します。
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痛風は男性に多く、働き盛りの世代に特に多い病気です。「夫がビールをよく飲む」「父が昔、足が痛いと言っていた」——そんな心当たりがあれば、ぜひこのページをご家族と共有してください。痛風発作は予防できる病気です。
尿酸値は食事・運動・薬の3つをバランスよく続けることで安定します。発作が起きていない時期こそ、定期的なご受診で尿酸値と腎機能をチェックする習慣を続けてください。 発作がなくなっても治療をやめると、多くの場合で再発します。
